Gmailが大量のメール送信に関するガイドラインを更新し、特に1日に5,000件を超えるメール送信を行う場合の規則が強調されています。 この更新は、大量のメールを送る際に遵守すべき3つの主要なポイントに焦点を当てています。
1. メールの認証
メール送信時には、SPF(Sender Policy Framework)、DKIM(DomainKeys Identified Mail)、DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting, and Conformance)などの認証手段を用いることで、送信者が正当なものであることを受信者に保証します。これは、フィッシング詐欺やスパムと戦う上で非常に重要な手段です。メールの認証を適切に設定することで、送信したメールが受信者の受信トレイに直接届きやすくなり、迷惑メールフォルダに振り分けられるリスクを減らせます。
2. 正しいメールフォーマット
メールのフォーマットに関しては、HTMLやプレーンテキストなど、受信者が適切に閲覧できる形式であることが求められます。また、メールには明瞭な件名、送信者情報、連絡先情報など、受信者が内容を理解しやすい情報が含まれている必要があります。このガイドラインは、受信者に対して透明性と明瞭性を提供し、メールの信頼性を高めることを目的としています。
3. 受信者が配信を容易に解除できる
List-Unsubscribeの実装は、受信者がメールマガジンやメーリングリストから自身を簡単に解除できるようにするためのものです。このオプションをメールに含めることで、受信者はワンクリック、またはメール内で提供されたリンクを通じて、追加のメッセージ受信を拒否できます。これはユーザーに対する配慮であり、不要なメールによるユーザーのフラストレーションを軽減することを目的としています。
List-Unsubscribeを用いることのメリットは多岐にわたります。 最も重要なのは、ユーザーが自分の受信するメールをコントロールできるようになることで、企業や組織はメールリストの質を高め、受信者にとって価値のあるコンテンツだけを提供することができます。また、メールの配信解除プロセスを簡単にすることで、受信者の迷惑メール報告の可能性を低減し、送信者の評判を守る効果もあります。 本記事では、このList-Unsubscribeについて、詳しく解説します。
はじめに:GmailガイドラインとList-Unsubscribeの基礎知識
まず、2024年2月に新しくなったGmailガイドラインとList-Unsubscribeの概要を解説します。
Gmailの新規ガイドラインの概要
日々やり取りされるメールは増加の一途をたどる中で、不要なメールを受け取るケースも増えています。その中にはフィッシングメールのように害を及ぼすものもあれば、迷惑メールのように害はなくとも邪魔に感じるメールもあります。
そこで、Gmailでは2023年10月に新しいガイドラインを発表しました。このガイドラインは2024年2月運用が開始されています。
メール送信者のガイドライン - Google Workspace 管理者 ヘルプ
このガイドラインが適用されるのは、1日に5,000通以上のメールを送信する送信者になります。また、対象となるメールアドレスドメインは @gmail.com
または @googlemail.com
になります。
そして、守るべき要件は以下の通りです。
- メールの認証
メールドメインに対して、SPF/DKIM/DMARCのメール認証方法が設定されている必要があります。
- 正しいメールフォーマット
RFC 5322に準拠したメールフォーマットを使用する必要があります。
- 受信者が配信を容易に解除できる
List-Unsubscribe、およびList-Unsubscribe-Postヘッダーを提供し、受信者が簡単に配信解除できるようにする必要があります。
なお、上記の3つの要件を守らないとドメインに対する信頼性が下がり、よりメールが届きづらくなります。 そのため、これらのガイドラインに準拠することが重要です。
Gmailの新ガイドラインの対象
Gmailの新ガイドラインとList-Unsubscribe機能は、メール送信を行うマーケターはもちろんのこと、設定を行うであろう開発者にとっても学ぶべきポイントが多いです。また、ユーザー(受信者)にとっても、今後はより良いメール受信体験が得られるので、押さえておくべきポイントが多いでしょう。
ぜひ本記事から、Gmailの新ガイドラインとList-Unsubscribe機能について理解を深めていき、デジタルコミュニケーションの質を向上させていきましょう。
Gmailの新ガイドラインについて
新ガイドラインの背景とその二重のメリット
2024年現在、顧客やユーザーとのコミュニケーションは非常に多様化しており、チャットやソーシャルメディアといった手段が存在する中で、メールは特にビジネスコミュニケーションの核心としてその重要性を保持しています。この状況を踏まえ、Gmailの新ガイドラインは、メールによるコミュニケーションの質をさらに向上させることを目的としています。 これにより、不要なコミュニケーションを減らし、受信者のメール体験を改善するだけでなく、送信者にも重大な利益をもたらすことが期待されています。
1. メールの認証の強化
メール認証の導入は、ドメインの偽装を防ぎ、フィッシングやスパムを効果的に減少させることができます。SPF、DKIM、DMARCといった認証技術を使用することで、メール送信者は自身の信頼性を証明し、メールの配信成功率を高めることができます。これは送信者にとって、自身のメッセージが意図した受信者に確実に届くことを保証し、結果的にビジネス成果の向上に寄与します。
2. List-Unsubscribeの効果的な活用
List-Unsubscribeの導入により、受信者は不要なメールを簡単に登録解除できるようになります。これは、受信者が自身の受信ボックスをより管理しやすくするとともに、送信者にとってもメールが迷惑メールとして分類されるリスクを減らすことができる大きな利点です。送信者は、実際にメールコンテンツに興味を持っているユーザーのみにメッセージを配信することができるため、キャンペーンの反応率や効果を大幅に高めることが可能になります。
メーリングリスト管理者への影響
今回のガイドラインは、大量にメールを送信するメーリングリスト管理者に大きな影響を与えています。もしかすると、List-Unsubscribeを実装することで、対象の登録解除を招いたかも知れません。
しかし、これを機に受信者との関係性を見直してみる良いきっかけであると捉えることもできます。登録解除(オプトアウト)のプロセスが分かりづらく、嫌な思いをした経験はないでしょうか。このストレスはプロダクトやサービスのブランドに対する信頼性を損ないますし、再度購読しようという気もなくなってしまいます。
オプトアウトのプロセスを手軽にし、体験を向上させることでユーザーとの信頼性を向上させ、結果としてロイヤリティを高められる可能性があります。また、不要なメールを送らなくなることで、購読者リストの質を上げられます。購読者リストを分析することで、より確度の高いターゲティングが可能になり、メールの効果を高められるでしょう。
List-Unsubscribeについて
List-Unsubscribeの基本
List-Unsubscribeはメールのヘッダーに追加される情報になります。メールのヘッダーとしては、たとえば件名や日付、送信者などの情報があります。以下は、List-Unsubscribeのヘッダーの例です。
List-Unsubscribe: <https://example.com/listUnsubscribeHeader/u/84882/6f...e28/52...26> List-Unsubscribe-Post: List-Unsubscribe=One-Click
上記のように、 List-Unsubscribe
と List-Unsubscribe-Post
の2つで構成されます。このヘッダーがあると、Gmail上で以下のように メーリングリストの登録解除
というリンクが表示されます。
ユーザー体験の改善
List-Unsubscribe で得られる最大のメリットは、受信者体験の大きな改善でしょう。メールボックスというのは個人の持ち物であり、プライベートなスペースです。Webサイトのようなプル型ではなく、プッシュ型のメディアになります。それだけに、自分の好まない情報が寄せられるのに対して、大きなストレスを感じやすいのがメールです。
List-Unsubscribe による直感的で簡単な登録解除プロセスは、ストレスの大幅な軽減を実現します。受信者が必要としている情報だけが届くようになれば、メールコミュニケーションがより品質高くなるでしょう。それはメール送信側にとっても、メールの確実な配信が可能になり、ユーザー属性に合わせた高い品質での情報提供が可能になります。
実践ガイド
ここでは、Customers Mail Cloudを使った List-Unsubscribe の実装方法を解説します。
List-Unsubscribeの仕組み
先述の通り、List-UnsubscribeはList-Unsubscribe-Postと一緒に利用します。なお、List-Unsubscribe-Postの値は List-Unsubscribe=One-Click
固定となっています。
List-UnsubscribeではURLの他、メールアドレスも指定できます。両方同時も可能です。たとえば以下のように指定します。URLの場合は <>
で囲みます。メールの場合はmailto:を付けます。優先順位は前にあるものになります。
List-Unsubscribe: <https://example.com/unsubscribe?id=99999999999>, <mailto:unsubscribe.99999999999@unsubscribe.example.com?subject=unsubscribe> List-Unsubscribe-Post: List-Unsubscribe=One-Click
nodemailerでの送信例
以下はSMTPを利用する例です。以下はNode.jsにて、nodemailerを使ってメール送信を行う例です。nodemailerの場合、headersパラメータで指定します。
const info = await transporter.sendMail({ headers: { 'List-Unsubscribe': '<https://example.com/unsubscribe?id=99999999999>, <mailto:unsubscribe.99999999999@unsubscribe.example.com?subject=unsubscribe>', 'List-Unsubscribe-Post': 'List-Unsubscribe=One-Click', }, from: 'Admin <example@smtps.jp>', to: 'user@example.com', subject: "メールマガジンのテスト", text: "Hello world?", html: "<b>Hello world?</b>", });
これでメールを送信し、Gmail側で購読停止すると、迷惑メールに入れる確認ダイアログが出ます。
APIを利用する
APIを利用してメール送信を行う場合には、 headers
パラメーターを指定してください。
const headers = { 'List-Unsubscribe': '<https://example.com/unsubscribe?id=99999999999>, <mailto:unsubscribe.99999999999@unsubscribe.example.com?subject=unsubscribe>', 'List-Unsubscribe-Post': 'List-Unsubscribe=One-Click', }; const params = { api_user, api_key, to, from, subject, text, headers }; // URLは契約による異なります const url = 'https://sandbox.smtps.jp/api/v2/emails/send.json'; // 送信処理 const result = await request .post(url) .send(params); console.log(result.body);
Emails - Manual - Customers Mail Cloud
送信されるデータについて
URLの場合
URLの場合、指定されたURLに対してPOSTメソッドが送られてきます。ボディは空です。クエリーストリングで対象を指定するIDを追加しておくのが良いでしょう。
メールの場合
メールの場合は、指定されたアドレスに対して返信メールが届きます。メール本文に次のように書かれています。
This message was automatically generated by Gmail.
メールの宛先に、ユーザ名などのIDになる部分を適用すれば良さそうです。
受信者側の体験
受信者での List-Unsubscribe の体験は、以下の2パターンになります。List-Unsubscribe は、とても簡単に登録解除が行える機能です。ユーザーの自主性とコントロールが高められ、送信側に対する高い透明性が実現されます。
メール上にあるリンクをクリック
List-Unsubscribe ヘッダーがあると、Gmail上で以下のように メーリングリストの登録解除
というリンクが表示されます。
そして、登録解除の確認ダイアログが表示されます。登録解除ボタンを押せば、登録解除が実行・完了します。
迷惑メール報告
もう一つのフローとして、迷惑メール報告があります。 List-Unsubscribe が設定されていると、迷惑メールにする際に確認ダイアログが出ます。ここで、登録解除だけを実行できます。迷惑メールにすると、メール自体は受け取り続けるので、不要なメールはそもそも受け取らない方が良いでしょう。
Gmailとの互換性:最適化のヒント
新ガイドラインの運用が開始され、Gmailユーザーに対してどうメールを送信するのが良いでしょうか。ここでは、そのヒントを紹介します。
DMARC対応が増加
51社のメルマガを追跡調査、「Gmailガイドライン」適用開始で企業の対応は変わったか | 日経クロステック(xTECH)によると、2023年10月以降DMARC導入率が85.8%に達しているとのことです。
DMARCはDNS情報であり、誰でも閲覧できる情報です。この情報を基に受信可否を判断しているので、受信箱に届いているかどうかも簡単に判別できるでしょう。まず、正しく設定されているのを確認しましょう。
GmailでのList-Unsubscribeの効果
Gmailは新ガイドライン適用前からList-Unsubscribeに対応しています。すでに使った経験がある方も多いのではないでしょうか。メールの上部にあるなど、Gmailはこの機能を強くサポートしています。
実装の確認
自社のメールが正しく List-Unsubscribe をサポートしているかどうかは、実際にメールを送ってみればすぐに分かります。メーリングリストの登録解除が表示されていれば、URLベースの購読解除が設定されている状態です。もし表示されていなくとも、迷惑メールを押した際にダイアログが出れば、メールアドレスベースの購読解除は正しく設定されています。
また、URLとメールどちらも実際に押してみて正しい情報が届くのを確認してください。もし間違っていると、購読者は解除したのに解除されていないと感じるでしょう。これは大きなユーザー体験の損失なので、しっかりと確認しておきましょう。
解除の自動化
実際の解除プロセスについては、なるべく自動化しましょう。時々、「実際の解除には数日を要する」といった文面を掲載していたWebサイトがありますが、そのような案内は List-Unsubscribe ではできません。つまり、受信者は即座に解除されると考えるはずです。
解除したはずなのにまだメールが届くという体験は、とてもストレスを感じます。そういったコミュニケーションは避け、信頼性を高めるためにも、解除プロセスは即座に行われるようにしましょう。
なお、Googleでは2日以内に実施される必要があるとしています。
Gmail introduces new requirements to fight spam
FAQ
ここからは、よく問い合わせのある質問について解説します。
通知を受け取る実装について
Gmailの要件を満たすためには、配信停止リクエストを処理するURLは必ずHTTPSを使用している必要があります。HTTPS(Hyper Text Transfer Protocol Secure)は、インターネット上でデータを暗号化して安全に送受信するためのプロトコルです。これは、開発段階から本番環境に至るまで、常にセキュリティを確保するための重要な要件です。
URLによる配信停止リクエストの処理 配信停止リクエストを処理するためのURLに関して、下記の点を考慮する必要があります。
POSTリクエストの受け取り:
Gmailや他のメールサービスからの配信停止リクエストは、指定されたURLに対してHTTP POSTリクエストとして送信されます。
リクエストボディの扱い:
送信されるPOSTリクエストのボディは空です。つまり、リクエストに含まれる情報はURL自体やクエリパラメータを通じて提供されます。したがって、リクエストを正しく処理し、どのユーザーが配信停止を希望しているかを識別するためには、URLの構造を適切に設計し、クエリストリングにユーザー固有の識別情報(例えば、ユーザーIDやメールアドレスの暗号化されたトークン)を含める必要があります。
セキュリティの確保:
HTTPSを使用することで通信が暗号化されますが、それだけでは不十分です。配信停止リクエストを受け取るサーバー側では、不正なアクセスやリクエストを適切に処理するためのセキュリティ対策(例えば、リクエストのレートリミット、適切な認証メカニズムの実装)を施す必要があります。
mailtoの利用とその課題:
mailto:による配信停止リクエストは、ユーザーがメールクライアントを介して直接配信停止を希望するメールアドレスにリクエストを送信する方法です。メールが転送された場合、元のFromアドレスがデータベースに存在しない可能性があるため、Toフィールドに含まれるアドレスを用いてユーザーを特定するメカニズムが必要になります。これは、受信側のシステムが転送されたメールのオリジナルの送信者ではなく、実際に配信停止を希望するユーザーを正確に識別するための措置です。
メールは転送される場合があり、その場合 mailto:
のFromが自社データベースにないケースがあります。そのため、Toにあるアドレスから、解除を希望するユーザーを特定する仕組みが必要です。
mailto: と URL の併用について
Gmailでは特にどちらを優先するかは明記していません。
Gmail送信者のガイドラインに関するFAQ - Manual - Customers Mail Cloud
ただし、URLが利用できるようになるのはしばらく経ってから(送信実績がたまってから)のようです。そのため、両方に対応するのがお勧めです。
まとめ
List-Unsubscribe への対応は、Gmailガイドラインの変更によって必須となっています。ただし、実装することでメール送信側にとってもメリットはあります。無駄なメール送信を防ぎ、迷惑メール率を下げられるからです。それによって、本来の購読者に対して、より精度の高い分析が可能になり、質の高いメールコミュニケーションが実現できるでしょう。
質の高いメールコミュニケーションは、購読者のエンゲージメント向上につながります。購読者側の簡単な登録解除プロセスと合わせて、List-Unsubscribeはメール送信側・受信側双方にとってメリットが大きい機能です。ぜひ、Gmailガイドラインに対応するためにも、 List-Unsubscribe の実装を検討してください。
Customers Mail Cloudなら複雑なList-Unsubscribeの対応が可能
List-Unsubscribe機能の実装は、前述している通りEメールマーケティングの効果を高め、受信者の信頼を維持する上で不可欠です。 しかし、この機能の正確な実装は技術的な知識と専門的な経験を必要とします。
Customers Mail Cloudなら複雑なList-Unsubscribe(ワンクリック購読解除)の対応が可能です。
是非質の高いメールコミュニケーションの実現のために、 List-Unsubscribeの実装を検討してください。