携帯キャリアの迷惑メール対策 ~第2回 docomo編~

前回( 携帯キャリアの迷惑メール対策 ~第1回 なりすましメールとは~ )では迷惑メールの「なりすまし」とはなんぞや?という事について説明しました。今回からは、各携帯キャリアの迷惑メールへの対策について紹介したいと思います。まずは docomo 編です。

docomo の迷惑メール対策設定について

様々な迷惑メール対策

docomoに限らずですが、携帯キャリアでは迷惑メール対策として様々な設定が用意されています。以下がdocomoの設定一覧となります*1

  1. 特定URL付メール拒否設定
  2. 指定受信/拒否設定
  3. 携帯・PHSのメール受信設定
  4. パソコンなどのメール受信設定
  5. なりすましメールの拒否設定(携帯・PHS)
  6. なりすましメールの拒否設定(パソコンなど)
  7. 大量送信者からのメール拒否設定
  8. メールサイズ制限

それぞれの意味は以下の通りです。

  1. 特定URL付メール拒否設定
    本文に含まれているURLが、拒否URLリストに載っている場合に受信拒否をする、という設定です。 拒否URLリストはネットスター株式会社が提供しているものを利用しているとのことです。

  2. 指定受信/拒否設定
    特定のメールアドレスやドメインを個別に指定して、受信を許可・拒否を制御することができる設定です。

  3. 携帯・PHSのメール受信設定
    docomo, au, softbank などの各携帯キャリアからのメールを受信するかをキャリアごとに設定できます。

  4. パソコンなどのメール受信設定
    GmailやYahooなどのPCメール(3番の携帯キャリア以外)を受信するかを設定できます。

  5. なりすましメールの拒否設定(携帯・PHS)
    送信者を携帯キャリアになりすましたメールを拒否するかを設定します。

  6. なりすましメールの拒否設定(パソコンなど)
    送信者をPCメールになりすましたメールを拒否するかを設定できます。

  7. 大量送信者からのメール拒否設定
    1日500通以上送っているドコモのアドレスからのメールを拒否するかを設定できます。

  8. メールサイズ制限
    受信するメール最大サイズを設定できます。最大10MBとなります。

各項目の優先度

各項目を設定すると、複数の項目に一致することもあります。例えば、「指定受信」で受信を許可するよう指定されているアドレスからのメールの本文に、URL拒否リストにあるURLが含まれる「特定URL付メール」だった場合などです。こうった場合はどうなるのか?

その様な場合のために、以下の通り各項目には優先度が設定されています。

優先度 項目
拒否するメールアドレスの登録
転送元・メーリングリストアドレスの登録
受信するメールアドレスの登録
拒否するドメインの登録
なりすましメールの拒否設定(パソコンなど)
特定URL付メール拒否設定
なりすましメールの拒否設定(携帯・PHS)
携帯・PHSメールの受信設定/パソコンなどのメール受信設定

先の例の場合、「特定URL付メール」より「受信するメールアドレスの登録(=指定受信)」の方が優先度が高いので、本文に拒否リストにあるようなURLが含まれていても受信できるということになります。

かんたん設定

迷惑メール設定は上記の各項目を個別に設定すれば自分にあったフィルターを設定することができます。しかし、項目数が多いため設定は決して簡単ではありません。そこで、設定が難しいという人のために「かんたん設定」というものが用意されています。

「かんたん設定」には、「キッズオススメ」「受信拒否 強」「受信拒否 弱」の3つが用意されており、いずれかを選択することで上記8つの迷惑メールが自動的に設定されます。一旦かんたん設定で設定を入れてから、個別に設定したい項目を編集する方法もオススメです。

それぞれの設定内容は以下の通りです。

項目 キッズオススメ 受信拒否 強 受信拒否 弱
1 特定URL付メール拒否設定 拒否する 拒否する 拒否する
2 指定受信/拒否設定 設定を利用する 設定を利用する 設定を利用する
3 携帯・PHSのメール受信設定 受信する 受信する 受信する
4 パソコンなどのメール受信設定 受信しない 受信しない 受信する
5 なりすましメールの拒否設定(携帯・PHS) 拒否しない 拒否しない 拒否しない
6 なりすましメールの拒否設定(パソコンなど) 拒否しない 拒否しない 存在しないドメインからは拒否する
7 大量送信者からのメール拒否設定 拒否しない 拒否しない 拒否しない
8 メールサイズ制限 設定しない 設定しない 設定しない

これを見ると、「キッズオススメ」と「受信拒否 強」が同じものだということがわかります。

よくGmailやYahooなどから携帯にメールを送ると「届かない」と言うことがありますが、4番の「パソコンなどのメール受信設定」が「受信しない」になっているとそれらPCメールが受信されなくなりますので、「キッズオススメ」「受信拒否 強」になっていないか確認するととよいかもしれません。

さて、ここまでは docomo の迷惑メール設定全般を説明してきましたが、ここからは、これらのうち No.5, 6 のなりすまし設定にフォーカスをあてて、より詳細を見て行きたいと思います。

なりすまし拒否設定

「なりすまし拒否設定」とは、先ほど説明したとおり「送信元のドメインを他のドメインになりすましたメールを拒否する」設定です。 なりすましたメールがどういうものなのかは、 前回のブログ( 携帯キャリアの迷惑メール対策 ~第1回 なりすましメールとは~ )を見て頂ければと思います。

どのようななりすましが拒否されるのか

メールの送信元の情報としては「エンベロープFrom」と「ヘッダーFrom」があります。また、送信元のドメイン情報として「送信サーバーのホスト名」があります。

なりすまし拒否の設定としては「なりすましメールの拒否設定(携帯・PHS)」と「なりすましメールの拒否設定(パソコンなど)」があり、パソコンの方は設定値として「全て拒否する」「存在しないドメインからは拒否する」とが選べます。

そこで、それぞれどういった場合に受信拒否になるのか、以下のパターンで受信確認を行いました。

パターン 確認方法
SPFなし SPFレコードが登録されていないサーバーから送信する
携帯ドメインになりすまし 送信元のドメインを携帯ドメインになりすます
PCドメインになりすまし 送信元のドメインを別のドメインになりすます
DNS登録のないPCドメインになりすまし 送信元のドメインをDNSに登録されていない別のドメインになりすます

PCドメインに関しては、「全て拒否する」と「存在しないドメインからは拒否する」という設定があるので、それに合わせて複数のパターンを用意しました。

そして、その確認結果をまとめたのが以下の表です!

送信サーバーのホスト名

パターン なりすましメールの拒否設定(携帯・PHS) なりすましメールの拒否設定(パソコンなど)
拒否する 存在しないドメインからは拒否する 全て拒否する
SPFなし 受信する 受信する 受信する
携帯ドメインになりすまし 受信する 受信する 受信する
PCドメインになりすまし 受信する 受信する 受信する
DNSのないPCドメインになりすまし 受信する 受信する 受信する

エンベロープFromドメイン

パターン なりすましメールの拒否設定(携帯・PHS) なりすましメールの拒否設定(パソコンなど)
拒否する 存在しないドメインからは拒否する 全て拒否する
SPFなし 受信する 受信する 受信する
携帯ドメインになりすまし 受信する 受信する 受信する
PCドメインになりすまし 受信する 受信する 受信する
DNSのないPCドメインになりすまし 受信する 受信する 受信する

ヘッダーFromドメイン

パターン なりすましメールの拒否設定(携帯・PHS) なりすましメールの拒否設定(パソコンなど)
拒否する 存在しないドメインからは拒否する 全て拒否する
SPFなし 受信する 受信する 受信しない
携帯ドメインになりすまし 受信しない 受信する 受信しない
PCドメインになりすまし 受信する 受信する 受信しない
DNSのないPCドメインになりすまし 受信する 受信しない 受信しない

まず「送信サーバーのホスト名」と「エンベロープFromドメイン」ですが、これらがどんなにおかしなドメインであっても受信されました。Authentication-Result ヘッダ(SPFレコードのチェック結果)の値は常に pass(ヘッダーFromドメインは正しいドメインに設定していた)でしたので、全くチェックしていないようです。

次に、「ヘッダーFromドメイン」です。 「ヘッダーFromドメイン」では明確に拒否されるパターンがありました。

  • なりすましメールの拒否設定(携帯・PHS) = 拒否する
    ヘッダーFromドメインを、携帯ドメイン(docomo.ne.jp, ezweb.ne.jp など)になりすました場合にのみ拒否される*2

  • なりすましメールの拒否設定(パソコンなど) = 存在しないドメインからは拒否する
    ヘッダーFromドメインを、DNSの登録がないドメインになりすました場合にのみ拒否される

  • なりすましメールの拒否設定(パソコンなど) = 全て拒否する
    ヘッダーFromドメインが別のドメインになりすました場合だけではなく、SPFレコードが登録されていない場合でも拒否される

最後のパターンでは、設定項目名に「パソコンなど」と入っていますが、携帯ドメイン・PCドメイン関係なく、SPF認証が正しく認証されないと受信されないようです。

ただ、「かんたん設定」の場合は、設定を「強」にしても、「なりすましメールの拒否設定(パソコンなど) = 全て拒否する」か「なりすましメールの拒否設定(パソコンなど) = 存在しないドメインからは拒否する」に設定されます。「全て拒否する」という設定は「詳細設定」でユーザが個別に設定しないと有効にならないモードなので、docomoは意外と寛容なのかもしれません。

次回は

今回は、docomoの迷惑メール対策、特に「なりすまし拒否設定」について紹介しました。次回はauを紹介します。


【参考URL】

迷惑メールでお困りの方へ | お知らせ | NTTドコモ
メールの基本設定 | サービス・機能 | NTTドコモ


【目次】携帯キャリアの迷惑メール対策

  1. 第1回 なりすましメールとは
  2. 第2回 docomo編 その1

*1:「SMS拒否設定」というものもありますがここでは割愛します

*2:docomo.ne.jp になりすました場合に拒否されることは確認していますが「携帯・PHS」のドメインにどういったドメインが含まれるのかまでは確認していません